名前:岸本 博文 | 日時:2002年09月14日 22時49分 |
恐縮ですが,化学が苦手なので教えて頂きたいのですが. 電解水をよう素滴定法を用いて分析するのですが,原理が解りません. 分析操作は,試料(電解水)によう化カリウムと酢酸を加え暗所に放置後,チオ硫酸ナトリウムにて滴定し黄色くなったらでんぷんを数滴加えてさらに滴定し,無色になったら終点. お願いします. |
名前:芦田 実 | 日時:2002年09月19日 11時38分 |
岸本 博文 様 必ずしも専門家ではありませんので,不正確な回答もあります.教育学部から公開しているホームページの質問箱とQ&A集にも回答(一部)を載せたいと思います. 質問17 電解水をよう素滴定法を用いて分析するのですが,原理が解りません.分析操作は,試料(電解水)によう化カリウムと酢酸を加え暗所に放置後,チオ硫酸ナトリウムにて滴定し黄色くなったらでんぷんを数滴加えてさらに滴定し,無色になったら終点. 回答(修正済み) 電解水の意味や成分がはっきりしません.健康飲料水(例:アルカリイオン水)や金属材料の電解研摩用の電解液なども考えられます.しかし,厚生労働省のホームページ(http://www.mhlw.go.jp/houdou/0111/h1106-2.html)の別紙2に記載されている酸性電解水であると仮定して回答します.主成分(最も多量にある成分)とは限りませんが,分析目的の成分は次亜塩素酸HClOです. 無色の酢酸はpHの調節や反応速度の調節のために加えられていて,他の薬品とは化学反応しないと考えられます.無色の次亜塩素酸HClOに無色のヨウ化カリウムKIを大過剰に加えますので,次亜塩素酸HClOが全部完全に無色の塩素イオンにCl-に変化し,その2倍の数のヨウ素イオンI -が褐色のヨウ素分子I2に変化します.すなわち,酸化還元反応による電子e-の放出数と受け取り数が等しくなります. HClO + H+ + 2e- → Cl- + H2O 2I - → I2 + 2e- ここで,上の反応は必ず同時に起こりますので,両辺をそれぞれたして,反応に関係しない化学種を補いますと HClO + H+ + 2I - → Cl- + H2O + I2 ∴ HClO + CH3COOH + 2KI → KCl + H2O + I2 + CH3COOK なお,酢酸CH3COOHとヨウ化カリウムKIは過剰にありましたので,多量に残っています.また,厳密にはヨウ素分子I2は残存しているヨウ素イオンI -と結合してI3-の形で水中に安定に溶けています. I2 + I - → I3- 暗所に放置するのは,生成したヨウ素分子が光エネルギーを吸収して反応したり,分解するのを防ぐためだと,ヨウ素分子が生成する反応が少し遅いため,完全に反応が終わるのを待つためだと思います. 続いて,褐色のヨウ素分子I2と無色のチオ硫酸ナトリウムNa2S2O3を反応させますと,ヨウ素分子I2が無色のヨウ素イオンI -に還元されます.ヨウ素分子の濃度が小さくなっていきますので,溶液の色が褐色から黄色に薄くなっていきます. 2S2O32- → S4O62- + 2e- I2 + 2e- → 2I - 2S2O32- + I2 → S4O62- + 2I - ∴ 2Na2S2O3 + I2 → Na2S4O6 + 2NaI ちょうど反応が終了した点で完全に無色になるはずです.しかし,淡黄色から無色の変化は判別し難いので,指示薬としてデンプンを加えます(上の反応には直接関係しません).ヨウ素−デンプン反応は非常に鋭敏ですので,淡黄色のような微量のヨウ素でも濃い紫色になり,紫色から無色の変化として上の反応の終点がはっきり分かるようになります.なお,ヨウ素−デンプン反応は普通の化学反応ではありません.デンプンの分子の中にヨウ素分子が高速に出入りしているだけです.入り込んだときに黄色から濃い紫色に変色します. 以上をまとめますと,次亜塩素酸とチオ硫酸ナトリウムは直接には定量的にうまく反応しないため,ヨウ化カリウムを媒介させて逆滴定しています(ヨウ素滴定).デンプンは指示薬として,酢酸はpH調節のため添加していると思います. 反応に関与する電子数より,次亜塩素酸1分子とチオ硫酸ナトリウム2分子の割合で反応することになります.滴定に使用した既知濃度のチオ硫酸ナトリウムの体積とモル濃度をV(mし)とC(mol/し)とします.最初に分取した未知濃度の次亜塩素酸の体積とモル濃度をV'(mし)とC'(mol/し)すると 2C'V'=CV ∴ C'=CV/(2V') 埼玉大学教育学部理科教育講座 芦田 実 |
名前:岸本 博文 | 日時:2002年09月21日 01時29分 |
先日はよう素滴定の分析の解説をして頂きありがとうございました. 事細かく解説していただいたので,よく解りました.(^o^) つきましては,また新たに教えて頂きたいのですが. キレート滴定法で行う硬度分析なのですが. <全硬度>分析操作 試料に塩化アンモニウム−アンモニア緩衝液にてpH10になるまで添加し,その後エリオクロムブラックT指示薬を数滴入れ,EDTAにて溶液が赤紫色から青色になるまで滴定する. <Ca硬度>分析操作 試料に水酸化カリウムにてpH12になるまで添加し,その後NN粉末指示薬を少量入れ,EDTAにて溶液が赤紫色から青色になるまで滴定する. 以上,上記分析について教えてもらえますか. お願いします.m(__)m |