前に戻る


名前:山内一徳 日時:2002年01月09日 09時21分00秒

高校の教員です.6モル/リットルの塩化亜鉛溶液に塩酸を少量加えた液に亜鉛板と銅板をたがいに接触させながら入れて50度から70度に保つ.しばらくして,銅の上に亜鉛が析出します.これは高校化学の知識ではうまく説明できません.なぜでしょうか.インターネットでこのページをみつけました.よろしくお教えください.

名前:芦田 実 日時:2002年01月10日 19時51分00秒

山内 一徳 様

 必ずしも専門家ではありませんので,不正確な回答もあります.将来,教育学部からホームページを公開したときに,回答の一部をQ&A集に載せたいと思います.

質問10 濃度6モル/リットルの塩化亜鉛水溶液に塩酸を少量加えます.この液に亜鉛板と銅板を互いに接触させながら入れて50度から70度に保ちます.しばらくすると,銅の上に亜鉛が析出します.これは高校化学の知識ではうまく説明できません.なぜでしょうか.

回答 1つの金属を電解質溶液に入れる場合でも,その金属表面が(結晶構造レベルで)不均一であると,陽極と陰極の作用をする部分ができ,微小領域で電流が流れます.これを局部電池といいます.この場合には金属の溶解と析出が,近い位置で同時に起こりますが,同じ金属なので見た目には分かり難いと思います.
 2つの異なる金属を接触させますと,それらの表面がたとえ均一であっても,接触電位差を生じます.普通の金属の表面は,顕微鏡で拡大して見れば微小な凹凸が多数あります.ゆえに,2つの金属を接触させますと複数の極微小な真実接触点ができます.さらに,普通の金属の表面は不均一(格子欠陥,結晶粒界,その他)ですから,真実接触点における接触電位差の値がばらつきます.2つの真実接触点により異なる金属間に閉回路ができますので,それらの点の接触電位差が異なればその回路に電流が流れます.
 このような局部的な電流により金属の溶解や析出が起こります.銅の上に亜鉛が析出することも起こりえると思います.その原因は金属表面に微小な凹凸があり,多結晶体で不均一だからです.表面に極薄い酸化膜などがあれば,さらに複雑な現象になると思います.

埼玉大学教育学部理科教育講座
芦田 実