名前:sono | 日時:2001年11月09日 23時04分00秒 |
私事ではありますが,硫酸銅から硫酸亜鉛七水和物の製造について質問したいと思います.硫酸銅の飽和水溶液に亜鉛粉末を加えるのですが,ここで亜鉛粉末を過剰に加えてはいけないのは何故でしょうか? |
名前:芦田 実 | 日時:2001年11月15日 11時58分00秒 |
sono 様 精密な分析実験をしたわけではありませんので,想像を含めて回答します.将来,教育学部からホームページを公開したときに,回答の一部をQ&A集に載せたいと思います. 質問7 硫酸銅から硫酸亜鉛七水和物を製造することに関して質問したいと思います.硫酸銅の飽和水溶液に亜鉛粉末を加えるのですが,ここで亜鉛粉末を過剰に加えてはいけないのは何故でしょうか? 回答 亜鉛粉末の量が少なく,銅イオンの青色が残っているときは,亜鉛が全て溶解し,その分だけ銅が析出するようです. Zn + Cu2+ → Zn2+ + Cu 金属亜鉛 銅イオン(U) 亜鉛イオン(U) 金属銅 pH試験紙で上澄み液のpHを簡易的に調べるとpH3〜4で,1日放置してもそのpHはあまり変わりませんでした.したがって,残存する銅イオンが加水分解して水酸化銅と水素イオンが微量できているようです. Cu2+ + 2H2O ⇔ Cu(OH)2 + 2H+ 銅イオン(U) 水 水酸化銅(U) 水素イオン 亜鉛粉末が過剰で,銅イオンの青色が消失した直後は,上澄み液のpHが約3になりましたが,数分でpHが約5に変化しました.これに伴い少量の気体が発生しました.1日放置後のpHは約5で,それ以上変化しませんでしたが,気体の発生はまだ続いています.したがって,遅い反応が継続していると考えられます.発生した気体が何か調べたわけではありませんので想像ですが,溶解した亜鉛イオンが加水分解して水酸化亜鉛と水素イオンが微量でき,さらにこの水素イオンが亜鉛を溶解しているのではないかと思われます. Zn2+ + 2H2O ⇔ Zn(OH)2 + 2H+ 亜鉛イオン(U) 水 水酸化亜鉛(U) 水素イオン Zn + 2H+ → Zn2+ + H2↑ 金属亜鉛 水素イオン 亜鉛イオン(U) 水素ガス 気体は発生しませんが,上の反応以外にも種々の反応が起こっているかも知れません.例えば,弱酸性〜中性なら Zn + SO42− + 4H+ → Zn2+ + H2SO3 + H2O 金属亜鉛 硫酸イオン 水素イオン 亜鉛イオン(U) 亜硫酸 水 中性〜弱塩基性なら Zn + SO42− + H2O → Zn(OH)2 + SO32− 金属亜鉛 硫酸イオン 水 水酸化亜鉛(U) 亜硫酸イオン 生じた亜硫酸や亜硫酸イオンがさらに金属亜鉛を溶解しているかも知れません.このようにイオウと酸素を含む化学物質の酸化還元反応は多種多様で,簡単には調べられません. 結論として,亜鉛粉末を過剰に加えてはいけない理由は,硫酸亜鉛七水和物の他にも何か不純物が少しできるためと思われます.おそらく水酸化亜鉛だと思いますが,実験して確認したわけではありません. なお質問には,製造した硫酸亜鉛七水和物を固体として取り出すとは書いてありません.しかし,取り出すために何らかの実験操作をしたら,また別の問題が起こるかも知れません.例えば,加熱濃縮したら遅い反応が加速されて不純物(水酸化亜鉛?)が多量にできたり,再結晶しようとしても不純物(水酸化亜鉛?)のほうが溶解度が小さくてうまく分離できないこと等が考えられます. 埼玉大学教育学部理科教育講座 芦田 実 |
名前:sono | 日時:2001年11月17日 08時40分00秒 |
ありがとうございます.とても分かりやすく,大変参考になりました. |