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名前:田中 優子 日時:2001年11月06日 23時47分00秒

さっそく回答をいただき本当にありがとうございます.ゆっくりかみしめて読んだらわかってきました.とても詳しくてわかりやすくて感動しました.でも素人ですので,たぶん浅くしかわからないでいると思いますが,本人はとても満足してます.
 そこでまたしても質問です.虹の中のNaの暗線と,Naの炎色反応の暗線の位置が同じだと,先日NHKスペシャルでやってました.ということは虹の暗線の位置を視覚的に並べれば,炎色反応の色がみんなわかって覚えられるということなのでしょうか?うーん,よくわからなくなりました.
また,母親と血液型が違う子供が生まれますが,胎内ではなぜ母親の血液と胎児の血液が混ざらないのですか?
最後に,白血病の治療などに骨髄移植がありますが,血液型の違う姉から移植して助かった女の子の話が,やはりNHKスペシャルに出てました.そしてその子は元の血液型から姉の血液型に変わりました.とてもびっくりしました.そんなことになって,どうして大丈夫なのですか?
あの,またまたわからくなったので,宜しくお願いします.

名前:芦田 実 日時:2001年11月10日 14時51分00秒

田中 優子 様

必ずしも専門家ではありませんので,不正確な回答もあります.将来,教育学部からホームページを公開したときに,回答の一部をQ&A集に載せたいと思います.

質問5 虹の中のNaの暗線と,Naの炎色反応の暗線の位置は同じなのですか?虹の暗線の位置を視覚的に並べれば,炎色反応の色がみんなわかって覚えられるということなのでしょうか?

回答 虹の暗線について詳しく知りたければ,地学(特に,天文学や気象学)の専門家に質問して下さい.炎色反応は化学に入り,虹の暗線と関連がありますので,想像を含めて回答します.
 光には波の性質と粒子の性質があります.また,光はエネルギーの一種でもあります.「粒子の性質」を言い換えると,「エネルギーには,それ以上分割できない最小単位がある」ということです.一般に原子は,中心に原子核があり,その周りを複数の電子が飛び回っています.それらの電子が持っている(運動?)エネルギーは全部異なっていて,エネルギーの小さいものほど内側の電子軌道を回っています(注).エネルギーに最小単位がありますので,電子軌道のエネルギーは必ず最小単位の整数倍になります.軌道間のエネルギーの差も必ず最小単位の整数倍になります.電子の持っているエネルギーの総和が最小のとき,基底状態にあるといいます.原子の外からエネルギーが与えられなければ,基底状態のままでいます.外からのエネルギーを(特に,外側の)電子が吸収(暗線)すると,その電子が持っているエネルギーが増加しますので,さらに外側の空の軌道に飛び移ります(せん移).このとき軌道間のエネルギー差に等しいエネルギーを吸収します.軌道間のエネルギー差よりも少しだけ大きいエネルギーが与えられた場合には,軌道間のエネルギー差に相当する分だけ吸収し,残りは捨てます.基底状態のときより電子の持っているエネルギーの総和が大きいとき,励起状態にあるといいます.エネルギーの大きい軌道に移っていた電子は,そのうち吸収したエネルギーと同量のエネルギーを自発的(自然)に光として放出(炎色)して,元の軌道に飛び移ります.
 暗線とは,光のエネルギー量(縦軸)と波長(横軸)の関係を図示した(特に,横軸を拡大して見た)ときに現れる暗黒な線をいい,フラウンホーファー(Fraunhofer)線はこの一例だそうです.フラウンホーファー線は太陽スペクトルに現れる吸収線で,数万本あるそうです.全部を覚えることは不可能です.フラウンホーファー線は輝線になって現れることもあるそうです.現れる理由は,上で説明した電子せん移に伴う光の吸収(暗線)と放出(輝線)です.現れる原因となる物質が,太陽表面に存在する場合と地球大気に存在する場合があるそうです.特に顕著な線としては,酸素(地球大気)のB線,水素のC線,NaのD1線,D2線,CaのH線,K線などがあるそうです.したがって,虹の中のNaの暗線は,虹が太陽光を分光して波長を細かく分けたために,フラウンホーファー線が現れたものと思います.暗線として見えるのは,その波長に限るとNaによる光の吸収のほうが優勢に起こっているためです.炎色反応では明るく光って見えますので,暗線ではなく輝線というと思います.ただし,炎色反応で目に見える輝線(波長)の数は特定の極めて少数に限られます.輝線として見えるのは,その波長に限ると炎からエネルギーを吸収する過程より,エネルギーを光として放出する過程のほうが優勢に起こっているためです.結論として,虹の中のNaの暗線と,Naの炎色反応の輝線の位置(波長やエネルギーの大きさ)は同じです.

注:厳密にいうと,1つの軌道には2個の電子が入れます.しかし,それらの電子のスピン(回転方向)が異なっていて,原子核のスピンと同方向と逆方向があります.それゆえ,正負電荷の相互作用が異なり,わずかにエネルギーが違います.すなわち,ニアミスはあるかも知れませんが,同じ軌道内の電子が衝突することはありません.

質問6 母親と血液型が違う子供が生まれますが,胎内ではなぜ母親の血液と胎児の血液が混ざらないのですか?白血病の治療などに骨髄移植がありますが,血液型の違う姉から移植して助かった女の子の話が出てました.そしてその子は元の血液型から姉の血液型に変わりました.

回答 このホームページは化学研究室で作っています.この質問は守備範囲を大きく超えますので,医学や生物学の専門家に質問して下さい.

埼玉大学教育学部理科教育講座
芦田 実