この下に図が見えなかったら Java Applet を有効にして下さい (H23.10.28 改訂) 前に戻る
計算方法
下の計算には改訂4版〜改訂2版「化学便覧基礎編U」(丸善)中のデータを使用しています.表の範囲外はpH緩衝効果が小さいですが,pHが近い部分についてなるべく計算だけはできるようにしました.このとき,表の値となめらかにつながるようにしたため,計算に使用した酸−塩基電離定数は最新の値と必ずしも一致していませんので注意して下さい.また,緩衝液を添加した試料の正確なpHを知りたい場合には,pH標準液で校正済みのpHメーターで測定して下さい.
1.グリシン+塩化ナトリウムNaCl−塩酸HCl緩衝液
入力したpHと下表の値を用いて直線的に内挿し,緩衝液をVt=10mL調製する場合の混合前の体積(Vgly,i,VHCl,i)を計算します.さらに,入力した体積(Vtk)の値を用いて,実際に必要な体積(Vgly,k,VHCl,k)に換算します(同様なので,下の2以降では省略することがあります).
Vgly,k = Vgly,iVtk/Vt, VHCl,k = VHCl,iVtk/Vt
下表の範囲外の計算値は異常な値になるので,左の範囲外ではVgly,i=0mL,VHCl,i=10mLとして,右の範囲外ではVgly,i=10mL,VHCl,i=0mLとして処理し,赤字で警告を表示しました.
表 グリシン+塩化ナトリウムNaCl−塩酸HCl緩衝液
pH(18℃) | 1.04 | 1.15 | 1.25 | 1.42 | 1.65 | 1.93 | 2.28 | 2.61 | 2.92 | 3.34 | 3.68 |
0.1M グリシン+0.1M NaCl (mL) | 0.0 | 1.0 | 2.0 | 3.0 | 4.0 | 5.0 | 6.0 | 7.0 | 8.0 | 9.0 | 9.5 |
0.1M HCl (mL) | 10.0 | 9.0 | 8.0 | 7.0 | 6.0 | 5.0 | 4.0 | 3.0 | 2.0 | 1.0 | 0.5 |
図 グリシン+塩化ナトリウム−塩酸緩衝液およびグリシン+塩化ナトリウム−水酸化ナトリウム緩衝液
2.グリシン+塩化ナトリウムNaCl−水酸化ナトリウムNaOH緩衝液
上の1の場合と同様な内挿法で計算します.下表の範囲外の計算値は異常な値になるので,左の範囲外ではVgly,i=10mL,VNaOH,i=0mLとして,右の範囲外ではVgly,i=0mL,VNaOH,i=10mLとして処理し,赤字で警告を表示しました.
表 グリシン+塩化ナトリウムNaCl−水酸化ナトリウムNaOH緩衝液
pH(20℃) | 8.53 | 8.88 | 9.31 | 9.66 | 10.09 | 10.42 | 11.01 | 11.25 | 11.51 | 12.04 | 12.33 | 12.60 | 12.79 | 12.90 |
0.1M グリシン+0.1M NaCl (mL) | 9.5 | 9.0 | 8.0 | 7.0 | 6.0 | 5.5 |
5.1 | 5.0 | 4.9 | 4.5 | 4.0 | 3.0 | 2.0 | 1.0 |
0.1M NaOH (mL) | 0.5 | 1.0 | 2.0 | 3.0 | 4.0 | 4.5 |
4.9 | 5.0 | 5.1 | 5.5 | 6.0 | 7.0 | 8.0 | 9.0 |
3.フタル酸水素カリウムKOOCC6H4COOH−塩酸HCl緩衝液
上の1の場合と同様な内挿法で計算します.下表の範囲外の計算値は異常な値になるので,左の範囲外ではVKHPt,i=50mL,VHCl,i=50mLとして,右の範囲外ではVKHPt,i=50mL,VHCl,i=0mLとして処理し,赤字で警告を表示しました.
表 フタル酸水素カリウムKOOCC6H4COOH−塩酸HCl緩衝液
pH(25℃) | 2.20 | 2.30 | 2.40 | 2.50 | 2.60 | 2.70 | 2.80 | 2.90 | 3.00 | 3.10 | 3.20 | 3.30 | 3.40 | 3.50 | 3.60 | 3.70 | 3.80 | 3.90 | 4.00 |
0.1Mフタル酸水素カリウム (mL) | 50.0 |
0.1M HCl (mL) | 49.5 | 45.8 | 42.2 | 38.8 | 35.4 | 32.1 | 28.9 | 25.7 | 22.3 | 18.8 | 15.7 | 12.9 | 10.4 | 8.2 | 6.3 | 4.5 | 2.9 | 1.4 | 0.1 |
0.1Mフタル酸水素カリウム水溶液50mLに,上の0.1M塩酸の体積を加えて水H2Oで100mLに希釈する.
図 フタル酸水素カリウム−塩酸緩衝液およびフタル酸水素カリウム−水酸化ナトリウム緩衝液
右の範囲外で使用した電離定数KA=8.73×10-6
4.フタル酸水素カリウムKOOCC6H4COOH−水酸化ナトリウムNaOH緩衝液
上の1の場合と同様な内挿法で計算します.下表の左の範囲外は上の3(フタル酸水素カリウム−塩酸緩衝液)で計算すれば良いので,VKHPt,i=50mL,VNaOH,i=0mLとして処理し,赤字で警告を表示しました.
右の範囲外は,下の電離平衡や体積の関係等から計算しました.さらに,7.0<pHは緩衝効果が無いので,赤字で警告を表示しました.
KHPt → K+ + HPt- , HPt- H+ + Pt2- , NaOH → Na+ + OH-
KA = [H+][Pt2-]/[HPt-] , Vt = VKHPt,i + VNaOH,i + VH2O,i
VKHPt,i = 50mL , [KHPt] = [KHPt]iVKHPt,i/Vt
VNaOH,i = Vt{Kw/[H+] + KA[KHPt]/(KA+[H+]) - [H+]}/[NaOH]i
さらに,入力した体積(Vtk)の値を用いて,実際に必要な体積(VKHPt,k,VNaOH,k)に換算します.
VKHPt,k = VKHPt,iVtk/Vt , VNaOH,k = VNaOH,iVtk/Vt
表 フタル酸水素カリウムKOOCC6H4COOH−水酸化ナトリウムNaOH緩衝液
pH(25℃) | (4.00) | 4.10 | 4.20 | 4.30 | 4.40 | 4.50 | 4.60 | 4.70 | 4.80 | 4.90 | 5.00 | 5.10 | 5.20 | 5.30 | 5.40 | 5.50 | 5.60 | 5.70 | 5.80 | 5.90 |
0.1Mフタル酸水素カリウム (mL) | 50.0 |
0.1M NaOH (mL) | (0.0) | 1.3 | 3.0 | 4.7 | 6.6 | 8.7 | 11.1 | 13.6 | 16.5 | 19.4 | 22.6 | 25.5 | 28.8 | 31.6 | 34.1 | 36.6 | 38.8 | 40.6 | 42.3 | 43.7 |
0.1Mフタル酸水素カリウム水溶液50mLに,上の0.1M水酸化ナトリウム水溶液の体積を加えて水H2Oで100mLに希釈する.
右の範囲外で使用した電離定数KA=8.73×10-6
5.酢酸CH3COOH−酢酸ナトリウムCH3COONa緩衝液
上の1の場合と同様な内挿法で計算します.下表の範囲外は,下の電離平衡や体積の関係等から計算しました.さらに,pH<3.0および6.5<pHは緩衝効果が無いので,赤字で警告を表示しました.
CH3COOH CH3COO- + H+ , CH3COONa → CH3COO- + Na+
KA = [CH3COO-][H+]/[CH3COOH] , Vt = VCH3COONa,i + VCH3COOH,i
VCH3COOH,i = Vt[H+]([H+] + [CH3COONa]i + KA)/(KA[CH3COOH]i + [CH3COONa]i[H+])
VCH3COONa,i = Vt(KA[CH3COOH]i - [H+]2 - KA[H+])/(KA[CH3COOH]i + [CH3COONa]i[H+])
pH(18℃) | 3.6 | 3.8 | 4.0 | 4.2 | 4.4 | 4.6 | 4.8 | 5.0 | 5.2 | 5.4 | 5.6 |
0.2M 酢酸 (mL) | 18.5 | 17.6 | 16.4 | 14.7 | 12.6 | 10.2 | 8.0 | 5.9 | 4.2 | 2.9 | 1.9 |
0.2M 酢酸ナトリウム (mL) | 1.5 | 2.4 | 3.6 | 5.3 | 7.4 | 9.8 | 12.0 | 14.1 | 15.8 | 17.1 | 18.1 |
左の範囲外で使用した電離定数KA=2.07×10-5 ,右の範囲外で使用した電離定数KA=2.39×10-5
図 酢酸CH3COOH−酢酸ナトリウムCH3COONa緩衝液
左の範囲外で使用した電離定数KA=2.07×10-5 ,右の範囲外で使用した電離定数KA=2.39×10-5
6.リン酸二水素カリウムKH2PO4−水酸化ナトリウムNaOH緩衝液
上の1の場合と同様な内挿法で計算します.下表の範囲外は,上の4(フタル酸水素カリウム−水酸化ナトリウム緩衝液)と同様の方法で計算しました.さらに,pH<5.0および8.5<pHは緩衝効果が無いので,赤字で警告を表示しました.
KH2PO4 → K+ + H2PO4- , H2PO4- H+ + HPO42- , NaOH → Na+ + OH-
KA = [H+][HPO42-]/[H2PO4-] , Vt = VKH2PO4,i + VNaOH,i + VH2O,i
VKH2PO4,i = 50mL , [KH2PO4] = [KH2PO4]iVKH2PO4,i/Vt
VNaOH,i = Vt{Kw/[H+] + KA[KH2PO4]/(KA+[H+]) - [H+]}/[NaOH]i
pH(25℃) | 5.80 | 5.90 | 6.00 | 6.10 | 6.20 | 6.30 | 6.40 | 6.50 | 6.60 | 6.70 | 6.80 | 6.90 | 7.00 | 7.10 | 7.20 | 7.30 | 7.40 | 7.50 | 7.60 | 7.70 | 7.80 | 7.90 | 8.00 |
0.1M リン酸二水素カリウム (mL) | 50.0 |
0.1M NaOH (mL) | 3.6 | 4.6 | 5.6 | 6.8 | 8.1 | 9.7 | 11.6 | 13.9 | 16.4 | 19.3 | 22.4 | 25.9 | 29.1 | 32.1 | 34.7 | 37.0 | 39.1 | 40.9 | 42.4 | 43.5 | 44.5 | 45.3 | 46.1 |
0.1Mリン酸二水素カリウム水溶液50mLに,上の0.1M水酸化ナトリウム水溶液の体積を加えて水H2Oで100mLに希釈する.
左の範囲外で使用した電離定数KA=1.23×10-7 ,右の範囲外で使用した電離定数KA=1.18×10-7
図 リン酸二水素カリウムKH2PO4−水酸化ナトリウムNaOH緩衝液
左の範囲外で使用した電離定数KA=1.23×10-7 ,右の範囲外で使用した電離定数KA=1.18×10-7
7.リン酸二水素カリウムKH2PO4−リン酸水素二ナトリウムNa2HPO4緩衝液
上の1の場合と同様な内挿法で計算します.下表の範囲外は,上の5(酢酸−酢酸ナトリウム緩衝液)と同様の方法で計算しました.さらに,pH<5.0および8.5<pHは緩衝効果が無いので,赤字で警告を表示しました.
KH2PO4 → K+ + H2PO4- , Na2HPO4 → 2Na+ + HPO42- , H2PO4- H+ + HPO42-
KA = [H+][HPO42-]/[H2PO4-] , Vt = VKH2PO4,i + VNa2HPO4,i
VKH2PO4,i = Vt[H+]([H+] + [Na2HPO4]i + KA)/(KA[KH2PO4]i + [Na2HPO4]i[H+])
VNa2PO4,i = Vt(KA[KH2PO4]i - [H+]2 - KA[H+])/(KA[KH2PO4]i + [Na2HPO4]i[H+])
pH(18℃) | 4.49 | 5.29 | 5.59 | 5.91 | 6.24 | 6.47 | 6.64 | 6.81 | 6.98 | 7.17 | 7.38 | 7.73 | 8.04 | 9.18 |
0.0667M リン酸二水素カリウム (mL) | 100 | 97.5 | 95 | 90 | 80 | 70 | 60 | 50 | 40 | 30 | 20 | 10 | 5 | 0 |
0.0667M リン酸水素二ナトリウム (mL) | 0 | 2.5 | 5 | 10 | 20 | 30 | 40 | 50 | 60 | 70 | 80 | 90 | 95 | 100 |
左の範囲外で使用した電離定数KA=1.32×10-7 ,右の範囲外で使用した電離定数KA=1.73×10-7
図 リン酸二水素カリウムKH2PO4−リン酸水素二ナトリウムNa2HPO4緩衝液
左の範囲外で使用した電離定数KA=1.32×10-7 ,右の範囲外で使用した電離定数KA=1.73×10-7
8.トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(HOCH2)3CNH2−塩酸HCl緩衝液
上の1の場合と同様な内挿法で計算します.下表の範囲外は,上の4(フタル酸水素カリウム−水酸化ナトリウム緩衝液)と類似の方法で計算しました.さらに,pH<6.0および10.0<pHは緩衝効果が無いので,赤字で警告を表示しました.
Tris + H2O TrisH+ + OH- , HCl → H+ + Cl- , H+ + OH- H2O
KA = [H+][Tris]/[TrisH+] , Vt = VTris,i + VHCl,i + VH2O,i
VTris,i = 50mL , [Tris] = [Tris]iVTris,i/Vt
VHCl,i = Vt{[H+] + [H+][Tris]/(KA+[H+]) - Kw/[H+]}/[HCl]i
pH(25℃) | 7.00 | 7.10 | 7.20 | 7.30 | 7.40 | 7.50 | 7.60 | 7.70 | 7.80 | 7.90 | 8.00 | 8.10 | 8.20 | 8.30 | 8.40 | 8.50 | 8.60 | 8.70 | 8.80 | 8.90 | 9.00 |
0.1M Tris (mL) | 50.0 |
0.1M HCl (mL) | 46.6 | 45.7 | 44.7 | 43.4 | 42.0 | 40.3 | 38.5 | 36.6 | 34.5 | 32.0 | 29.2 | 26.2 | 22.9 | 19.9 | 17.2 | 14.7 | 12.4 | 10.3 | 8.5 | 7.0 | 5.7 |
0.1Mトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン水溶液50mLに,上の0.1M塩酸の体積を加えて水H2Oで100mLに希釈する.
左の範囲外で使用した電離定数KA=7.30×10-9 ,右の範囲外で使用した電離定数KA=7.76×10-9
図 トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(HOCH2)3CNH2−塩酸HCl緩衝液
左の範囲外で使用した電離定数KA=7.30×10-9 ,右の範囲外で使用した電離定数KA=7.76×10-9
9.塩化アンモニウムNH4Cl−アンモニア水NH3緩衝液
上の1の場合と同様な内挿法で計算します.下表の範囲外は,5(酢酸−酢酸ナトリウム緩衝液)と類似の方法で計算しました.さらに,pH<7.2および11.3<pHは緩衝効果が無いので,赤字で警告を表示しました.
NH4Cl → NH4+ + Cl- , NH3 + H2O NH4+ + OH-
KB = [NH4+][OH-]/[NH3] , Vt = VNH4Cl,i + VNH3,i
VNH4Cl,i = Vt(KB[NH3]i - [OH-]2 - KB[OH-])/(KB[NH3]i + [NH4Cl]i[OH-])
VNH3,i = Vt[OH-]([OH-] + [NH4Cl]i + KB)/(KB[NH3]i + [NH4Cl]i[OH-])
pH(室温) | 8.0 | 8.3 | 8.58 | 8.89 | 9.19 | 9.5 | 9.8 | 10.1 | 10.4 | 10.7 | 11.0 |
0.1M NH4Cl (mL) | 97.0 | 94.1 | 88.9 | 80.0 | 66.7 | 50.0 | 33.3 | 20.0 | 11.1 | 5.9 | 3.0 |
0.1M NH3 (mL) | 3.0 | 5.9 | 11.1 | 20.0 | 33.3 | 50.0 | 66.7 | 80.0 | 88.9 | 94.1 | 97.0 |
左の範囲外で使用した電離定数KB=3.23×10-5 ,右の範囲外で使用した電離定数KB=4.17×10-5
図 塩化アンモニウムNH4Cl−アンモニア水NH3緩衝液
左の範囲外で使用した電離定数KB=3.23×10-5 ,右の範囲外で使用した電離定数KB=4.17×10-5
注意事項
濃塩酸,酢酸や濃アンモニア水のビンの中にはそれらのガスが充満していて,フタを開けるときにガスが噴き出すことがあります.ガスや飛沫が目に入らないように注意しましょう.また,ガスには毒性や強烈な刺激臭があります.ガスを吸わないように換気の良い所で取り扱いましょう.薬品が目に入ったり,皮膚についたらすぐに水で洗い流しましょう.
濃塩酸と濃アンモニア水の市販品濃度は推定値で,飽和に近い濃度です.酢酸の市販品濃度は100%に近い値です.正確な濃度が必要な場合には,濃度がわかっている酸や塩基で滴定して,正確な濃度を決定しましょう.
濃塩酸や濃硫酸を水で希釈するときは,発熱するので注意しましょう.特に,水酸化ナトリウムを水で溶かすときは,非常に発熱して湯気が出ます.湯気(水酸化ナトリウム水溶液)には毒性があり,刺激臭があります.湯気を吸わないように換気の良い所で取り扱いましょう.これらの溶液の体積を調製する場合には,冷えてから行いましょう.
水酸化ナトリウムの固体(粒)には潮解性があり,空気中の湿気を吸収してベトベトになります.天秤を使うときは粒をこぼしても大丈夫なように,天秤の皿とビーカーの間に紙(薬包紙など)を敷きましょう.質量をはかるときは手早く行いましょう.残りの水酸化ナトリウムの固体は,すぐにビンのふたをしっかり閉めて保管しましょう.
水酸化ナトリウムの固体は粒が大きいので,計算値の質量をぴったりはかり取ることはできません.
天秤は慎重に取り扱い,薬品をこぼしたらすぐに掃除しましょう.はかれる範囲は天秤によって異なります.最大秤量を超過しないように注意しましょう.