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二酸化炭素CO2の作り方(調製方法)
1 実験室で二酸化炭素CO2を作るには,大理石(方解石,石灰石,炭酸カルシウムCaCO3)に希塩酸HClを滴下します(実験装置).
2 捕集するときは,空気と完全に置換するように集気ビンなどの底までガラス管を入れて,下方置換で捕集します.捕集量が分かりやすいように,水上置換で捕集することも考えられます(実験装置).
3 その他,重曹(炭酸水素ナトリウムNaHCO3),炭酸マグネシウムMgCO3などの固体を加熱しても二酸化炭素CO2が生じます.

(1) CaCO3 + 2H+ + 2Cl- → Ca2+ + 2Cl- + H2O + CO2↑,  (2) 2NaHCO3 → Na2CO3 + H2O + CO2↑, MgCO3 → MgO + CO2

石灰水Ca(OH)2の作り方(調製方法)
1 石灰水を作るには,消石灰(水酸化カルシウムCa(OH)2)を水に加えてかき混ぜます.
2 消石灰(水酸化カルシウム)は水に溶け難いので白く濁ります.そこで,充分に放置した後に,透明な上澄み液を使用します.
3 必要ならば,試薬名,作成日,作成者などを書いたラベルを付けましょう.

注意事項
 塩酸HClや石灰水Ca(OH)2が目に入ったり,皮膚についたら直ぐに水で洗い流しましょう.
 石灰水は保存中に空気中の二酸化炭素CO2を吸収するので注意しましょう.

二酸化炭素CO2の化学的性質
 二酸化炭素CO2は無色・無臭で毒性はありませんが,高濃度になると酸素不足で窒息死します.二酸化炭素の圧力が1atmのとき水100mLに0℃で172mL,20℃で94mL,40℃で61mL,60℃で45mLほど溶けます.また,5.2atmで液化します.固体(ドライアイス)は-78.5℃で昇華します(融点は-56.6℃).
 二酸化炭素は人間の呼気にも含まれており,石灰水(水酸化カルシウムCa(OH)2水溶液)に吹き込むと炭酸カルシウムCaCO3を生じて白く濁ります.さらに多量の二酸化炭素を吹き込むと,水に溶けやすい炭酸水素カルシウムCa(HCO3)2を生じて透明になります.これを煮沸すれば二酸化炭素を放出して,再び炭酸カルシウムを生じて白く濁ります.

(3) Ca2+ + 2OH- + CO2 → H2O + CaCO3↓,  (4) CaCO3 + CO2 + H2O ⇔ Ca2+ + 2HCO3-

二酸化炭素CO2の発生の計算方法
 反応前の希塩酸(塩化水素HClの水溶液)の密度をDs1(g/mL),質量百分率濃度をWp1(%),モル濃度をCm1(mol/L),体積をVo1(mL),それに溶けている塩化水素の質量をWt1(g),物質量をMo1(mol),式量(モル質量)をFw1(g/mol)とします.さらに,反応前の石灰石(炭酸カルシウムCaCO3)の質量をWt2(g),物質量をMo2(mol),式量(モル質量)をFw2(g/mol)とすると,次式のような関係があります.これらの式と既知の値を用いて未知の値を求めることができます.

  Wt1=Vo1Ds1Wp1/100, Mo1=Wt1/Fw1, Cm1=1000Mo1/Vo1, Mo2=Wt2/Fw2

 反応後の二酸化炭素CO2の溶解残存量(物質量mol)は,塩酸HClの物質量(mol)の1/2,石灰石CaCO3の物質量(mol),および二酸化炭素の飽和濃度(0.0339mol/L)から求めた物質量(mol)のうち,最も小さい値を採用します.二酸化炭素の溶解残存量の質量百分率濃度をWp3(%),モル濃度をCm3(mol/L),溶けている二酸化炭素の量を気体の体積に換算した値をVo3(mL),質量をWt3(g),物質量をMo3(mol),式量(モル質量)をFw3(g/mol)とすると,次式のような関係があります.

  Mo3≦Mo1/2, Mo3≦Mo2, Mo3≦0.0339mol/L・Vo1/1000  ここで 0.0339mol/L は二酸化炭素(1atm)の水中の飽和濃度

  Cm3=1000Mo3/Vo1, Wt3=Mo3Fw3, Vo3=Mo3・22400・298/273, Wp3=100Wt3/(Vo1・Ds1)

 二酸化炭素CO2の気体発生量(物質量mol)は,塩酸HClの物質量(mol)の1/2と石灰石CaCO3の物質量(mol)のうち小さいほうの値と二酸化炭素の溶解残存量(物質量mol)の差として求めます.気体として発生する二酸化炭素の体積をVo4(mL),質量をWt4(g),物質量をMo4(mol)とすると,次式のような関係があります.

  Mo4=Mo1/2-Mo3≧0, Mo4=Mo2-Mo3≧0, Wt4=Mo4Fw3, Vo4=Mo4・22400・298/273

 二酸化炭素CO2に関する計算値(特に使用可能量)は単なる目安です.発生に時間がかかり実験中に発生が終了するとは限らないため,塩酸(石灰石)の容器などの中の空気を置換するために損失がでるためです.水上置換を想定して,下の表の方法で二酸化炭素の損失量を見積もっています.しかし,実験器具などの関係で実際と異なる場合には,損失係数Lsと容器呼称(目安容積,最大目盛)VoFおよび許容注入率(=塩酸の体積/容器呼称)Pgを変更することによってご自分で見積もり直して下さい.さらに,二酸化炭素の使用可能量(目安)の体積をVo5(mL),質量をWt5(g),物質量をMo5(mol)とすると,次式のような関係があります.

表 二酸化炭素CO2の損失量の見積り方法
塩酸(石灰石)の容器呼称
(目安容積,最大目盛)VoF(mL)
 塩酸の体積Vo1(mL)  損失量の見積もりVoL(mL)
     100mL VoF・Pg (mL)以下

 初期値Pg=0.8
損失係数(1.3・容器呼称−塩酸体積)

  VoL=Ls(1.3VoF−Vo1

損失係数の初期値Ls=1.0
     200mL
     250mL
     300mL
     500mL
    1000mL
    2000mL
    3000mL
    5000mL

  Vo5=Vo4-VoL, Mo5=Vo5・273/(22400・298), Wt5=Mo5Fw3

炭酸カルシウムCaCO3の沈殿と炭酸水素カルシウムCa(HCO3)2の溶解の計算方法
 反応前の石灰水(水酸化カルシウムCa(OH)2の水溶液,密度は1.00g/mLと仮定)の希釈倍率をDt6,希釈後の石灰水の質量百分率濃度をWp6(%),モル濃度をCm6(mol/L),体積をVo6(mL),それに溶けている水酸化カルシウムの質量をWt6(g),物質量をMo6(mol),式量(モル質量)をFw6(g/mol)とします.さらに,反応前の気体の二酸化炭素CO2の体積をVo7(mL),質量をWt7(g),物質量をMo7(mol)とすると,次式のような関係があります.これらの式と既知の値を用いて未知の値を求めることができます.

  Dt6≧1 ここで 1 は希釈しない飽和溶液, Cm6=0.0229mol/L/Dt6  ここで 0.0229mol/L は水酸化カルシウムの水中の飽和濃度

  Mo6=Cm6Vo6/1000, Wt6=Mo6Fw6, Wp6=100Wt6/Vo6, Mo7=Vo7・273/(22400・298), Wt7=Mo7Fw3

 物質量(mol)で比較して,二酸化炭素CO2を水酸化カルシウムCa(OH)2の2倍以上通じれば,途中で生じた炭酸カルシウムCaCO3の沈殿は全て炭酸水素カルシウムCa(HCO3)2に変化して溶解します.ただし,この場合には二酸化炭素がそのまま空気中に出ていったりせず,完全に反応すると仮定しています.炭酸カルシウムも飽和濃度までは水に溶解します.反応後に水に溶けている炭酸カルシウム(水溶液,密度は1.00g/mLと仮定)の質量百分率濃度をWp8(%),モル濃度をCm8(mol/L),体積をVo8(mL),それに溶けている炭酸カルシウムの質量をWt8(g),物質量をMo8(mol),式量(モル質量)をFw8(g/mol)とします.また,反応後の炭酸カルシウムの沈殿の質量をWt9(g),物質量をMo9(mol)とします.さらに,反応後の炭酸水素カルシウム水溶液(密度は1.00g/mLと仮定)の質量百分率濃度をWp10(%),モル濃度をCm10(mol/L),体積をVo10(mL),それに溶けている炭酸水素カルシウムの質量をWt10(g),物質量をMo10(mol),式量(モル質量)をFw10(g/mol)とすると,次式のような関係があります.

2Mo6≦Mo7 のとき

  Vo10=Vo6, Mo10=Mo6, Wt10=Mo10Fw10, Cm10=1000Mo10/Vo10, Wp10=100Wt10/Vo10

  Vo8=Vo6, Mo8=0, Wt8=0, Cm8=0, Wp8=0, Mo9=0, Wt9=0

 物質量(mol)で比較して,二酸化炭素CO2を水酸化カルシウムCa(OH)2の1倍以上〜2倍未満通じれば,途中で生じた炭酸カルシウムCaCO3の沈殿の一部が炭酸水素カルシウムCa(HCO3)2に変化して溶解します.残った炭酸カルシウムの量が飽和濃度(溶解度)未満ならば,これも溶解しています(沈殿の消滅).溶解している炭酸カルシウムの物質量(mol)は,水酸化カルシウムと炭酸水素カルシウムの物質量(mol)の差および炭酸カルシウムの飽和濃度から求めた物質量(mol)のうち小さいほうを採用します.

Mo6≦Mo7<2Mo6 のとき

  Vo10=Vo6, Mo10=Mo7-Mo6, Wt10=Mo10Fw10, Cm10=1000Mo10/Vo10, Wp10=100Wt10/Vo10

  Vo8=Vo6, Mo8≦Mo6-Mo10, Mo8≦0.0082mol/L・Vo8/1000
                        ここで 0.0082mol/L は,二酸化炭素の圧力が1atmのときの炭酸カルシウムの水中の飽和濃度

  Wt8=Mo8Fw8, Cm8=1000Mo8/Vo8, Wp8=100Wt8/Vo8, Mo9=Mo6-Mo8-Mo10, Wt9=Mo9Fw8

 物質量(mol)で比較して,二酸化炭素CO2を水酸化カルシウムCa(OH)2より少なく通じれば,炭酸水素カルシウムCa(HCO3)2は生じません.生じた炭酸カルシウムの量が飽和濃度(溶解度)未満ならば,これも溶解しています(沈殿が生じません).溶解している炭酸カルシウムの物質量(mol)は,二酸化炭素の物質量(mol)および炭酸カルシウムの飽和濃度から求めた物質量(mol)のうち小さいほうを採用します.

Mo7<Mo6 のとき

  Vo10=Vo6, Mo10=0, Wt10=0, Cm10=0, Wp10=0

  Vo8=Vo6, Mo8≦Mo7, Mo8≦0.0082mol/L・Vo8/1000, Wt8=Mo8Fw8, Cm8=1000Mo8/Vo8, Wp8=100Wt8/Vo8

  Mo9=Mo7-Mo8, Wt9=Mo9Fw8